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日本人の成人4割が睡眠6時間未満【先進国ワースト1位】
OECDによる2021年の調査では、日本人の睡眠時間は平均して7時間22分。
これは、調査対象の33カ国中最も短い数字。
ですがこれを聞いて、
と思われた方、多いと思います。
よく、理想的な睡眠時間は7-8時間とされていますよね。
米国の大規模調査によると、睡眠時間が7時間の人が最も死亡率が低く長寿で、逆に8時間を超えると死亡リスクが上昇するようです。
しかしこの、7時間22分という数字は子供も含めたうえでの話。
厚生労働省の2019年「国民健康・栄養調査」によると、睡眠時間が6時間未満の成人は、男性で37.5%、女性で40.6%。年齢の増加とともに、男女4割を超える結果に。
つまり、成人の半数近くが6時間すら寝ていないことになります。
自分は夜型だから、という人がいますが、いつ寝るかは関係なく、そもそも睡眠時間の絶対量が圧倒的に少ないんですね。
このように多くの人が睡眠不足に陥るわけですが、その理由としては、「ストレス」が52.2%と最も多く、「生活習慣の乱れ」38.4%、「運動不足」24.2%が上位に挙がるという報告があります。
しかし私が思うに、これら瑣末な理由は全て、「睡眠の重要性を理解していないから」に起因すると考えています。
というわけです。
そこでここからは、睡眠の重要性について一緒に見ていきましょう。
睡眠の重要性
よく健康の3つの柱として、食事・運動・睡眠があげられます。
しかしここで私が問題だと考えているのは、これら3つに明確な優先順位がついていないことです。
結論から言うと、睡眠が最も重要です。
なぜなら、良質な食事や運動は睡眠を土台としているから。
カリフォルニア大学の研究では、睡眠負債に陥ると人は不健康な食事を欲するようになることを明らかにしています。
睡眠不足になると、グレリン(成長ホルモンの分泌を促し、食欲を増進させる)とレプチン(食欲を抑制させる)のホルモンバランスが崩れ、ジャンクフードを食べたくなるのです。
また、睡眠不足は持久運動能力や認知判断能力を低下させるとの報告もあり、運動のコンディションを悪化させることもわかっています。
つまり、睡眠に気をつけていなければ3つの柱が全て揺らいでしまうということ。
もちろん自分磨きの土台も食事・運動・睡眠なので、これは致命的な結果です。
さらにここからはより皆さんに睡眠の重要性を理解してもらうため、睡眠不足による悪影響を具体的に7つ紹介していきます。
睡眠不足による悪影響7つ
テストステロンの低下
睡眠時間が 6.5 時間未満になると、テストステロン濃度が 22%低下するという報告があります。
テストステロンの分泌は25歳をピークに年1%程度減少していくので、1週間の睡眠不足は10歳から15歳老けたことと同義。
テストステロンは睡眠中に最も多く作られます。
解決策としては、時間帯関係なくとにかく寝ること。
2005年にスウェーデンで行われた研究では、健康な若い男性7人(22-32歳)を対象に、夜(23:00~7:00)に寝てもらった場合と昼間(7:00~15:00)に寝てもらった場合でテストステロンの分泌の変化を調べました。
結果、どちらの睡眠でも睡眠中にテストステロンが増加し、起床後の経過とともに減少しました。
テストステロンは、男らしさの他にも、精神の安定や集中力・記憶力の向上などにも作用する要のホルモン。
ただでさえ現代の男は電子機器によるストレスや睡眠負債によってテストステロン濃度が低いと言われているので、最も気をつけたい生活習慣なわけですね。
メンタル悪化(ストレス・イライラの上昇)
なんか最近イライラしてるなー、と感じる時の大半は睡眠不足です。
怒りっぽくなる原因は、ホルモンの分泌異常。
寝不足は交感神経を優位にし、過度なアドレナリン分泌を促進。
血圧上昇や免疫低下により病気にも罹りやすくなります。
また、昼夜逆転に近い生活を送っていると、日中に太陽光を浴びる時間が減るので、セロトニン不足により抑うつや不安も増強されます。
いくら時給が高いとはいえ、あなたの命・健康のほうが大事なのはいうまでもないからです。
健康へのダメージ
当然ですが、睡眠不足は健康へのダメージをきたします。
以下に具体例を挙げますが、睡眠不足は多くの病気発症につながっています。
これほどの健康リスクを抱えながらも、「寝ないで頑張る」必要がどこにあるのか不思議です。
- 風邪をこじらせて肺炎になるリスクは、睡眠時間が5時間未満の人は8時間睡眠の人に比べて1.4倍
- 4時間睡眠を2日間続けると食欲を抑えるホルモンであるレプチン分泌は減少し、逆に食欲を高めるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大する→肥満、高血糖
- 多くの研究によって、睡眠障害が生活習慣病の罹患リスクを高め症状を悪化させることがわかっている
いうまでもなく、私たちの一番の資本は健康な肉体です。
健康なくして仕事やプライベートを最大限充実させることは不可能です。
でも多くの人はこの原則を忘れがち。
それは現在の「ドリンクやサプリで不調を誤魔化している自分の状態が普通」と思い込んでいるから、でもあります。
自己規律能力の低下
睡眠不足に陥ると、人間らしさを司る前頭葉の働きが低下します。
前頭葉は自己規律を担っている部分なので、前頭葉の機能が低下するデメリットは大きいです。
- 問題解決のための判断力や思考力の低下
- 計画を立てたり行動を起こしたりする能力の低下
- 感情コントロールの低下(やる気喪失、イライラ)
つまり簡単に言えば、動物(猿)っぽく生きてしまうということ。
人間ならではの考える力が失われると、現代社会で働いたりして収入を得る、良好な人間関係を築くのが難しくなります。
小手先の恋愛術とか時短仕事術などに頼る前にまず寝ましょう。
土台がぐらぐらだといくら枝葉のスキルを学んだところで意味がありません。
生産性の低下
睡眠不足はあらゆる日中のパフォーマンスを低下させます。
低いパフォーマンスからは、低い生産性しか生まれません。
生産性が低下してしまう理由として、睡眠不足による集中力低下が挙げられます。
ペンシルベニア大学の研究によると、6時間睡眠を2週間続けると2日間徹夜したのと同じレベルまで集中力が下がるそうです。
ちなみに、徹夜した人の脳の働きは、酎ハイを7~8杯飲んで酔った状態。
そんな酩酊状態で、仕事や勉強、社会活動をこなしているなんて想像するとちょっと恐ろしくないですか?
しかしもっと怖いのが、慢性的な睡眠不足を自覚できている人は少ないという事実です。
体臭や持続的な痛みに鈍くなるのと同じように、自分では気づかないレベルで睡眠負債を抱えているケースはままあります。
そこでこの章の最後に、睡眠チェックシートなるツールを紹介しているので、自分が寝不足かどうか客観的に判断してみてください。
外見的魅力度の低下
睡眠不足によるデメリットとしてはメンタルや脳などへの内面イメージが強いですが、実は外見的な魅力度にも大きく関わっているのをご存知でしょうか?
スウェーデンの研究によると、睡眠不足が2日続くだけで、不健康で近づきにくいと他人から評価されることが明らかになっています。
寝不足になると猫背になったり、死んだ魚のような目になったりしますよね。
ただ、内面の不調はなんとなく自分でもわかりますが、外見は鏡でないと確かめられないので注意が必要です。
と思われるかもしれませんが、人が他人を外見で判断するのは本能(遺伝子)レベルの話なので、その潮流に抗うことはほぼ不可能です。
メラビアンの法則によると、第一印象は出会ってから3秒~5秒の間に決まるといわれており、さらに会話の内容よりも見た目で判断される傾向にあるとわかっているので、いかに外見が人の魅力度を決めているかがわかります。
逆をいうと、どれだけのイケメンでも寝不足が続くとモテないということ。
ファションやコスメにこだわる前に、まずは睡眠の質に投資しましょう。
経済的損失
と思われた方も多いと思いますが、睡眠不足による日本の経済損失が年間約15兆円に及ぶという内容をご存知でしょうか?
米シンクタンク、ランド研究所による試算によると、睡眠不足による日本の経済損失は15兆円(GDP換算で約3%)にも及ぶことがわかっています。
理由はこれまでに挙げたパフォーマンス低下がそのまま経済的生産性の低下に寄与するから、なわけですが、15兆円と聞いても少々ピンとこないかもしれません。
例えば日本の喫煙による経済損失は、年間2兆円超えと言われています。
煙草もかなり不健康な習慣なのに、睡眠不足の損失に比べては5分の1ほどの影響。
いかに睡眠不足が社会や個人にとっての大きな損失かが理解できるでしょう。
改めて、社会の風潮や常識にとらわれてはいけないと思い知らされます。
寝不足チェックツールの紹介
睡眠不足による内面・外見それぞれの悪影響を理解いただいたところで、皆さんが気になるのは自分が寝不足に陥っていないかどうかですよね。
先ほどの項目でも挙げたように、睡眠はそもそも無意識の領域なので主観による判断が難しいです。多くの人が、自分では眠れているつもりでも、実際はかなり睡眠の質が低かったりします。最悪のケースでは、質の低い状態が自身のデフォルトだと思い込んで日々を生きていたりする。
そこで、睡眠不足をチェックできるツールとして、「3DSS(3次元型睡眠尺度)チェックシートによる睡眠型診断」を紹介します。このツールの特徴として、睡眠の“質”や“量”に加え、“位相(リズム)”も簡単に図ることができるのがポイント。
ちなみに自分は「質低下・短眠型」でした。具体的なアドバイスも書かれていたり、点数としてしっかり可視化できるので対策を立てやすいのも嬉しいところ。
ぜひ活用してみてください。
ぐっすり眠るためには?
睡眠の重要性をこれでもかと理解したところで、ここからはぐっすり眠る方法を具体的にお伝えします。
この記事の内容を実践すれば、寝不足による日中のどんよりした疲れを感じなくなるので、ぜひ最後までご覧ください。
同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
結論、平日休日関係なく、23時までには寝て(マスト)6-7時に起きましょう。
基本的に地球の摂理に逆らわないことが、よい睡眠サイクルを保つ秘訣です。
夜は暗い部屋で過ごし、朝はブルーライト(日光、青い空)を浴びる。
人を含め、動物は進化の過程で地球の自転に合わせた体内時計を獲得してきたので、地球環境とうまく連動して生きていくことが重要です。
逆に夜勤や夜遊びなどで夜に強い光を目に入れていると、脳は夜を昼だと錯覚して一生寝付くことができません。
自分は夜ずっと家にいるのにうまく寝付けないという方は、部屋が明るすぎるのが原因です。
暗めの赤色灯、目安としては、雰囲気のいいレストランを意識して部屋の明かりを調整してみてください。
寝る2時間前の運動はNG
寝る直前に激しい運動を行うと交感神経が活性化し、寝つきが悪くなります。
自分磨きを頑張っている人の中には、仕事終わりにジムに行って帰って寝る、みたいな生活の人もいると思いますが、避けた方がいい習慣。
ジムは出勤前の朝に行きましょう。
朝や日中の運動は質の高い睡眠をもたらしてくれます。
厚生労働省『e-ヘルスネット』によると、「運動習慣がある人には不眠の割合が少ない」ことが研究で分かっています。
逆に夜間において、副交感神経が優位になるヨガやストレッチなどはおすすめ。
カフェイン、ニコチン、アルコールを摂取しない
寝つきに限った話ではないですが、コーヒー・お酒・タバコの摂取は避けるべきです。
お酒を飲むとよく眠れる、は誤解です。
寝つきが良くなるだけで、全体としては睡眠が浅くなり、中途覚醒が増えます。飲酒して寝ると、いつもと違う変な時間に起きてしまった、なんて経験は皆さんあると思います。
次に、タバコ吸うと気持ちよくなってよく眠れるんだよな、も誤解です。
ニコチンは覚醒作用が強く、しかも10秒以内に効果が現れるので依存しやすい性質があります。
タバコの気持ちよさを睡眠時のリラックスと誤って解釈してはいけません。
カフェインが眠りに悪いというのは皆さんもご存知と思いますが、注意したいのが意外な食品にもカフェインが含まれている可能性があるということ。
代表例として、紅茶、抹茶、玉露、ウーロン茶、ココア、チョコレートなど。
特に紅茶やココアは、寝る前におすすめの飲み物として紹介されることも多いので気をつけたいところ。カフェインレスのものを選んで接種しましょう。
逆にぐっすり眠るのに効果的な飲み物は以下↓
- ホットミルク(ホルモンや自律神経を整える)
- トマトジュース(GABAによる精神安静作用)
- ホットジンジャー(心身を内側から温める、リラックス効果)
- 白湯(リラックス、デトックス、美容効果)
ぜひ取り入れてみてください。
寝る前にスマホなどの電子機器を触らない
寝る前についついスマホを手に取ってしまう人や、仕事でPCと延々睨めっこ、なんて人は現代で多いと思います。
Brigham and Women’s HospitalのChang教授らによると、就寝前の電子機器の使用がメラトニンの分泌を減少させることがわかりました。
具体的には、12人の健康な青年に対して、就寝前の読書を紙媒体で行う場合と読書を電子書籍で行う場合でメラトニンの分泌量を比較しました。
結果、就寝前の読書を電子書籍で行った場合は、メラトニンの分泌が少なく、主観的な睡眠の質が低下していることが示されたのです。
また面白いのが、電子機器を寝室に置くだけでも睡眠の質が低下するという事実です。
University of California BerkeleyのFalbe教授らの2048人の児童に対して行われた研究によると、スマホのような電子端末をベッドのそばに置いて寝ていた児童は、そうでない児童と比較して睡眠時間が平均20.6分短く、睡眠に対する不満足度が1.39倍となるそうです。
スマホをポケットに入れて授業を聞くだけで学習能力が低下する、研究は有名ですが、それと似たような現象ですね。
つまり、マルチタスクデバイスが意識下にあるだけで人の脳は休まらないということです。
また、これは私の推測ですが、夜間についスマホをずっと触ってしまう原因として、日中の充実度が低いからという理由もあると思います。
日中やりたくもない仕事に従事していたり、目的もなく生活していたりするツケを取り戻そうと無意識に考えているから、夜遅くまでスマホに手が伸びるのだと思います。
なので対策としては、
- 寝室には電子機器を置かない
- 仕事や趣味の時間を見直して、日中の生活満足度を上げる
ことが最善かなと考えています。
プラシーボ効果を利用する
最後に、睡眠には実はマインドの面も超重要なんだよということをお伝えします。
ぐっすり眠るための方法を全部試したけど、季節や気圧などどうしてもいろんな要因が重なって寝れない日ってありますよね。
そんなときにおすすめなのが、「よく寝た」と思い込むこと。
子供騙しに聞こえるかもしれませんが、これだけで日中のパフォーマンスが向上することが研究でわかっています。
コロラド大学の睡眠に関する実験では、嘘の脳波検査でも、あなたは昨夜平均以上のレム睡眠時間を取っていると伝えられた被験者は学習テストで良い結果を残し、平均以下のレム睡眠時間しか取れていないと伝えられた被験者たちはテストで平均以下のパフォーマンスしか発揮できませんでした。(実験結果の偏りを抑えるために、複数人の被験者に繰り返し実験を行ったとのこと)
つまり、十分に眠っていないという意識は日中のパフォーマンスを低下させる一因になるということ。
充実した1日を過ごしたいならば、たとえ睡眠不足であってもそれを完全に忘れてしまうのが良いそうです。
逆をいうと、実際によく眠れている人でも、自分は眠れていないんだ…と思い込んでいると本当に眠れていないということになるんですね。
睡眠不足があらゆる自分磨きを台無しにする理由【解決策も】【まとめ】
「睡眠不足があらゆる自分磨きを台無しにする理由」と解決策を解説してきましたがいかがだったでしょうか?
最後に、今回紹介した内容をおさらいしておきましょう。
睡眠不足があらゆる自分磨きを台無しにする理由【解決策も】
01:日本人の4割が睡眠6時間未満【先進国ワースト1位】
02:睡眠の重要性
03:睡眠不足による悪影響
テストステロンの低下
メンタル悪化(ストレス・イライラの上昇)
健康へのダメージ
自己規律能力の低下
生産性の低下
外見的魅力度の低下
経済的損失
04:寝不足チェックツールの紹介
05:ぐっすり眠るためには?
同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
寝る2時間前の運動はNG
カフェイン、ニコチン、アルコールを摂取しない
寝る前にスマホなどの電子機器を触らない
プラシーボ効果を利用する
最後に。
私たちの人生は、3分の1が睡眠です。
これだけ多くの割合を占めているにもかかわらず、なぜそこに多くの人は投資したがらないのか。
理由はシンプルです。睡眠中は無意識だから、その大切さがうまく実感できないんです。
しかしこの世界の真理は、「本当に大切なものは目に見えない」です。
わかりやすい資格や仕事のノウハウは、あくまで幸せへの手段でしかありません。
私たちはつい即時的な物事や目に見えるものに投資したくなりますが(リターンがわかりやすい)、より先の未来または目に見えないものに投資できるかどうかが、真に豊かに生きる秘訣なんじゃないでしょうか。